INTERACTION2024・参加報告(田中)
学会情報
参加した学会名 | INTERACTION 2024 |
開催場所 | 学術総合センター内 一橋記念講堂 |
日程 | 2024/3/6-2024/3/8 |
報告者 | 田中 宏昌 |
会議概要
1997年より毎年開催されているシンポジウム「インタラクション」は,ユーザインタフェース,CSCW,可視化,入出力デバイス,仮想/拡張現実,ユビキタスコンピューティング,ソフトウェア工学といった計算機科学,さらには認知科学,社会科学,文化人類学,メディア論,芸術といった人文科学の研究者および実務者が一堂に会し,インタラクションに関わる最新の技術や情報を交換し議論する場を提供してきました.ここ数年の参加者は600~700人に達し,本分野に高い関心が寄せられています.
*「INTERACTION 2024」http://www.interaction-ipsj.org/2024/ より引用
発表概要
タイトル
呼吸状態の誘導が認知的な笑いに与える影響の調査
内容
コメディ番組などのお笑いコンテンツ視聴時の笑いを誘発しやすくするために,呼吸をさまざまな状態に誘導することが笑いの誘発に与える影響を調べた.
質疑内容
- 笑いを映像ベースで検出しているが、それは適切なのか
- ラフトラックのみでコンテンツ視聴での笑いを操作できるのではないか
- 笑いの前兆となる呼吸は存在しないのか
体験記
2泊3日で自分の発表が3日目だったので最初の2日は緊張もせずに純粋にさまざまな発表を見て楽しんでいました。自身の発表は及第点くらいかなと思っていますが、発表を長くしていたので他の発表を回る時間がなくまわりきれなかったことが心残りです。
過去に参加した学会はカチッとしたものだったので雰囲気の落差に驚きました。インタラクションは面白いことをする人がたくさん集まっているという印象でした。特に今回は発表数も300を超えており、とても賑やかでした。
以下では特に印象に残った発表を紹介します。
ShadoCookies: 視点位置に依存して情報切り替え可能なクッキー製造手法
クッキーの穴を斜めに開けることで回転させると違う模様が浮かび上がるクッキーの研究でした。クッキーに穴を開けるという制約上、複雑な情報を記述することはできませんが面白い研究だと思いました。
腕時計型モーションセンサによるエレキギター演奏運動可視化システム
3Dプリンタで作った腕時計型のもの中に加速度センサが入っていて、手首の捻りとストロークを検知していました。弦の反発で加速度が変化するのでそこからストロークの強さやリズムキープできているかをフィードバックするものでした。フィードバックの種類が多く、完成度が高いのと、ストロークの強さなどは教本で学ぶのが難しいためかなり実用的なものでした。実際、実用化の話が進んでいるとかなんとか
無理のないエレキギター高速単音ダウンピッキング奏法の習得に向けたリアルタイム運動診断システム
エレキギターのダウンピッキングに着目し、セミの生き死にで滑らかさを鍛えると言うもので、先述のものと比べて細かい部分に着目しているのとフィードバックが独特という点で面白いと思いました。
SMART MOVIE: ARグラスとスマホを併用した任意の場所で大画面かつ見やすい映像を視聴するシステム
スマホをARを使って拡張する研究でした。ARで難しい操作をスマホでできる点などは2つのデバイスの相性の良さが窺えました。また、スマホの持ち方を固定することでハンドトラッキングからスマホの位置を予測するのが頭がいいと感じました。
ぎゅっとーく:VRを利用したぬいぐるみとの新たなコミュニケーション手段の提案
ぬいぐるみに話しかけた内容を蓄積してVR上で会話する研究でした。直接ぬいぐるみと喋ってもいいのではないかという質問をしたところ、あえて喋るのはVRのみにして分けることでぬいぐるみのイメージを守っているという回答が返ってきました。ぬいぐるみのイメージを守るという観点が自分にはなかったので面白いと感じました。
Selfie WanD: 自撮り棒を動かすことによる撮影用入力インタフェース
自撮り棒の入力インタフェースで、既存のものだと操作の自由度が低いので操作感を損なわずスマホの加速度入力のみで完結させるインタフェースとのことでした。入力で左右に動かすと撮るときに一度決めた構図が変わってしまうのは使うのが難しいと思いましたが、手前と奥くらいなら撮影に支障なく入力ができそうでした。
ぬけがらメトリ:半透明膜を用いたフォトグラメトリにより物体の表面を現実と異なるかたちで抽出・造形する手法
アートっぽい研究で普段あまり触れないタイプではなかったので見ていて面白かったです。フォトグラメトリで作成された物体は普段のイメージと少し違う部分があり、アート作品を見ているようでした。
Chronospoon: 時を操る調味食器
熟成したものの味を学習してその味になるように溶液を足して任意時間経過後の味を再現したり中和を利用して巻き戻したりもできるスプーンでした。賞味期限は風味は損なわれるものの安全性に問題はない期限なので、このスプーンがあれば賞味期限を延ばすことができるという説明を聞き、すごい研究だと感じました。しっかり受賞していて納得感がすごかったです。
AIR-range Plus:テーブル上を動き回る複数の空中像とのインタラクション
Toioに載せて移す映像を動かす空中像のデモでした。暗室での展示ということもありますが単純に輝度が高くて綺麗に見えました。コンテンツも可愛らしく、デモとしてのクオリティが高く見応えがありました。
Pixel Board: 共在感を伝えるLEDボードの開発
スマホなどの端末でQRコードを読み込み、WebサイトにアクセスしLEDボードの色をWebサイト上で操作するものでした。青一色で塗りつぶす人とそれを阻止する人とがいたり見ていて面白かったです。ただ、誰でも操作できることが距離の近さを感じにくくしている気も少ししました。
可視化された光線の空中映像化とインタラクションの実現
ミストをディスプレイにする空中像でそこだけで面白かったんですが、手のモーションをセンシングすることで空中像のギターの弦を弾くと音が鳴るなどインタラクションができ面白かったです。ミストをディスプレイに使うのはライブの演出とかでできたりしないかなと思いながら見ていました。
オンタイム生成結果提示による三次元再構成撮影支援手法
実際に体験したのですが、角度を変えながら写真を撮っていき、ある程度撮ったらそれを反映して三次元再構成を行なった結果がフィードバックとして返ってくるというものでした。画質(?)というか構成後の質が良くない部分が分かるので支援システムとして良いと思いましたが、文化財など撮影時間が限られているものの三次元再構成での使用を想定しているとのことで実用的だと思いました。
すいころ:吸引によって生じる布の凹みの動きに合わせて自由形状の立体が任意に転がるシステム
とにかくデモが上手かったという印象です。壁面を転がるキューブは見ていて飽きない可愛らしさがあり、シンプルにデモとして非常に映えると思いました。
声の高低を用いた和音学習ゲームの開発
実際に体験しましたが、特定の音高の声を出すことで敵にダメージを与えることができるゲームでした。絶対音感を持っている人とそうでない人難易度の差がかなりあると感じましたが、そこら辺のニッチさが研究っぽいと少し思いました。
愛着のあるキャラクタによる自然な販促支援を目的とした食品ラリーARコンテンツの開発
あからさまな販促が購買意欲を削ぐということで、キャラクターとの会話の中で販促を行うというものでした。カップ麺ができる前の時間など隙間の時間に暇つぶしがてらコンテンツを見るというのは実用的だと思いましたし、アンケートなどの回答率もコンテンツと絡めることで上がるのかなと思いました。
おもちゃの足跡を利用した子どもの自主的な片付けを促進するシステムの提案
「おもちゃの足跡」というのがまず天才だと思うんですよね。おもちゃの種類によって形が違う上に、足跡が残るという現象が子供でも直感的に理解できるという点ですごいと思いました。おもちゃを動かすと足跡が消えていくというのもあるべき場所に戻すというある種の気持ちよさがありそうだと思いました。
日常行動に付随して承認してくれるミニマルなスイッチロボット
何かロボットの欲求を満たしてあげることでロボットからの承認を得られるようなシステムでした。ただ承認されるのではなく理由付けを行うことで相手がロボットという虚しさを軽減していました。さらにデザインに力を入れていて筒状のものの中からロボットが出てくるのですが、そこに普段魚が物陰に隠れているような生き物くささを感じました。実際には介護施設などでの使用を考えているそうで、エアコンをつけるようにロボットが言ってユーザーががそれをつけるとお礼を言ってくれるようなユースケースらしいです。何かをしてもらうことの多い介護施設だと特に需要がありそうだと思い、ユースケースがしっかりしていると感じました。
生命感向上のための産卵行動機能を有するロボットが子供に与える影響の調査
実際に毛の生えた鳥型のロボットを撫でると体温を感じ、思った以上に生物っぽさを感じました。実際に鳥を撫でたことがないのですが、鳥だと言われたら信じていたと思います。それだけでなく産卵行動という生命の生と死というサイクルに注目したのもすごいと思いました。多くのロボットが小動物などの可愛らしさという表面的なものを模倣する中、グロテスクな面である生命の誕生に着目して生命を感じさせるというアイデアに感服しました。
人工物の待機中の動きによる生き物らしさの検証
使っていないランプが動くという研究で、ただ動かされているということがわかっているのにトイストーリーのように生命が宿っているのではと錯覚するほど思いのほか生き物っぽさを感じました。「ランプの形状が生き物らしさを感じやすい先行研究があって……」という説明を聞いたとき最高だと思いました。
幼児のコミュニケーションを活性化させるグローブ型デバイスを利用した混色ゲームの考案
グローブをして握手などをして力加減を調節して目標の色を作るゲームでした。実際に体験しましたが、かなり繊細な力加減を求められました。子供のころ力加減がわからなくて車のドアを一発で閉められなかったのを思い出し、こういうゲームがあればそういう部分が鍛えられたのかもしれないと思いました。
タッチパネル上に直立空中像を表示する光学系とそのインタラクションの初期検討
空中像本体はもちろん触れないものの、それに接触しているタッチパネルを操作すると空中像も同期して動くことで間接的な操作している感覚を与えているものでした。確かに空中像自体を触るということはどうやってもできませんが、触っているような感覚は与えることができるというのは盲点で衝撃を受けました。
まとめ
さまざまな発表を聞いたり実際に体験することで刺激になりましたし、自身の発表に対してフィードバックをもらえてよかったです。ワイワイお祭りみたいで楽しかったです。