eLearn 2024・参加報告(相浦航)

学会情報

参加した学会名eLearn 2024
開催場所M Hotel Singapore(81 Anson Rd, Singapore 079908)
日程2024/10/7-2024/10/10
報告者相浦 航

発表概要

タイトル

The Development and Formative Evaluation of an AR-Based Picture-Book Storytelling Training System

著者

Wataru Aiura, Masanori Yamada, Shogo Fukushima

内容

保育士を目指す方のより実践的な練習の機会を増やすために、子どものアバターの前で絵本の読み聞かせをトレーニングできるARアプリケーションプロトタイプの開発と形成的評価を行なった。

形成的評価の結果として,

  1. リアリティをより高めるための要素
  2. 新たな採点基準項目
  3. 授業での実用に関して求められる追加機能

などの意見を得ることができ、今後のアプリケーションの改善目標を定めることができた。

論文
The Development and Formative Evaluation of an AR-Based Picture-Book Storytelling Training System
指摘内容
  • ユーザーが自分の練習を振り返るコンテンツがあった方がいい
  • 採点基準項目に「声のトーン」も入れるといいのでは?
  • ユーザーのモチベーションを高めるために、ゲーミフィケーションの考え方を導入するといい(バッジやレベル、ランキング要素など)

体験記

eLearn 2024というシンガポールで行われる国際学会に参加してきました! 自分は英語がとても苦手で不安でしたが、なんとか乗り越えることができ、とてもいい経験になりました!

 

1日目


福岡空港を16:40に出発→トランジットで香港に20:00時ごろ到着。 次のフライトまで5時間半ありましたが、荷物を持ったまま寝るわけにもいかないので、ちょっと空港内を歩いたり、ベンチに座ってパワポの修正や発表練習をしていました。 

夜中の1:40に出発→朝の5:30にシンガポール到着。 シンガポールに着いて嬉しい!という気持ちと、長時間の移動で疲れていたので「今から1日が始まるのか、体力的に大丈夫かな」という気持ちがありました。

10:30に国際学会の会場に到着しました。 ちゃんとスーツを着て行ったら、ラフな格好をしている人ばかりで、先生に「スーツは発表の時だけで良いよ」と言われ、着替え直しました。規模にもよると思いますけど、国際学会って意外とラフな感じなんだなと思いました。

発表が次の日だったので、シンガポールの街並みを見つつホテルに戻ってひたすら発表練習と質疑応答の対策をしました。

 

2日目

発表の約1時間前に会場に着きました。そこからも発表練習をしてましたが、ずっと不安でした。
そしていよいよ自分が発表する時間になりました。

僕の発表内容は、The Development and Formative Evaluation of an AR-Based Picture-Book Storytelling Training Systemです。簡単に説明すると、子どもたちのアバターを目の前に出現させて、その子どもたちアバターの前で絵本の読み聞かせをトレーニングするためのARアプリケーションの開発とその形成的評価を行なった、という内容です。
今までできるだけ英語を避けて生きてきた自分としては、英語での発表は日本語での発表とはまったく別物で、日本語でのプレゼンのようにスライドに要点だけを書いて口頭で詳しく説明するみたいな高度な技術は英語ではとてもできなかったので、スライドは文章だらけで、言い間違いも結構してしまいましたが、リスナーの方々が暖かく聞いてくださったので、なんとか乗り切ることができました。質疑応答では、他の方々の発表と比べても活発だったと思います。僕だけでは聞き取れなかったり答えられないことも、山田先生がサポートしてくださりました。とても感謝しています。 そして他の方々の発表にも積極的に参加しました。

Reimagining Digital Learning Game Design and Development: A Case Study

生成AIを使ったデジタル絵本の開発に関する発表です。親子の対話を促すために、質問や指示がアプリ上に表示されるようです。以前、親が子どもと一緒に絵本を読む「対話的絵本共有」が子どもにとって認知や言語の発達に効果があるという論文を見たことがあったので、それを促進する仕組みを導入するのはいいなと思いました。

Comparing Learning-oriented to Entertainment-oriented in Practicing Immersive Virtual Reality 

学習志向型IVRと娯楽志向型IVRの違いを比較したという発表です。学習志向型IVRの方が学習不安や認知負荷が高く、操作ミスをシステムのせいにしやすくなるそうです。それに対して娯楽志向型IVRは、学習の楽しさが高くなり、ポジティブな学習体験になるそうです。自分の絵本の読み聞かせトレーニングも、できるだけシンプルにして認知負荷を抑えて楽しいアプリケーションにしようと思いました。

VR-based Learning Support System for Kyudo (Japanese Archery)

VRを使って、「弓道」の射法八節という8つのステップを学ぶアプリケーションの発表です。学習者自身の映像、お手本の動画、テキストの指示がVR内に表示されるというものです。今後は3Dモデルを使って複数の視点から動きを確認できるようにするということでしたが、個人的にはVRであることの強みがあまり活かせていないように感じました。

Enhancing Social Interaction in Distance Higher Education Through a 2D Metaverse Virtual Campus

Zoomでは自然で偶発的な学生同士の交流が少ないという課題があり、その課題に対処するための2Dメタバースプラットフォームを複数紹介するという発表です。 つい最近参加したハッカソンでoViceという2Dメタバースプラットフォームのアプリケーションを使ってグループワークをしたので、確かにZoomよりも自分の立ち位置が分かりやすくて話しやすかったなと思いました。

Leveraging Technology to Enhance the Learning Experience of International Students in Higher Education

国際学生が言語や文化の違いによって学業に苦労するという課題に対して、さまざまなアプリケーションを使うことで、学習環境やクラス内外でのコミュニケーションを促進することができたという発表です。世界の国境がどんどん無くなってきていることを実感しました。英語がますます大事になってくるなと思いました。

Assessing Elementary Students’ Computational Thinking Skills through Solving Unplugged Spatial Programming
(写真を撮り忘れてました💦)
幼稚園から小学校4年生までの子どもに対し、コンピューターを使わずに物理的なタイルを使うことによってプログラミングのスキルや考え方を評価するという発表です。コンピューターを使わないということで、低コストで実践できるのがいいなと思いました。また、学年によって考え方や戦略が変わるのが興味深いなと思いました。

夜ご飯は山田先生と耿先生と「ホーカー」というたくさんの屋台が集まっているところに行きました。僕は四川料理のホイコーローのようなご飯を食べました。少し辛かったですが美味しかったです。山田先生はカエルの料理を注文していました。1口頂いたのですが、とても辛かったです。でも鶏肉みたいで美味しかったです。
(ちなみにカエルの料理は写真上のちょっと左にある料理です)

 

3日目

この日は耿先生が発表する日でした。そして、他の方の発表も聞きました。

Exploring the Impact of VR Scaffolding on EFL Teaching and Learning: Anxiety Reduction, Perceptions, and Influencing Factors

VRを使って英語のスピーキングを学習することで、英語を話すことに対する不安を軽減し、VR学習中のガイドがVRに対する不安も軽減することが分かったという発表です。この発表では「Virtual Speech」というアプリケーションが使われていて、自分も前に少しだけ体験したことがあったのですが、もう一度英会話練習に使ってみようと思いました。

Exploring University Students’ Perspectives on ChatGPT Use for Learning and Pedagogical Implications in South Korea

韓国の大学生99人を対象に、ChatGPTをどのくらい使っているのか、どう思っているのかなどアンケートしたという発表です。結果としては、78.8%の学生がChatGPTを無料版で使っていて、19.2%の学生がChatGPTを有料版で使っていたそうです。合わせるとなんと98%もの学生がChatGPTを使っているということだったので、韓国は日本よりもAIの活用が進んでいるなと感じました。

The use of AI Chatbot for Pre-University Chinese Language students in Singapore

シンガポールの高校生が中国語を学ぶためのAIチャットボットの開発を行なったという発表です。このAIチャットボットはOpenAIのGPT Builderを使って開発されたそうで、ユーザーの入力言語に関わらず、簡単な中国語で応答してくれるそうです。ただ、個人的な感想としては、普通のChatGPTに「簡単な中国語で会話して下さい」と言っても同じことができるのではないかなと感じました。

Analysis of Students’ Learning Transitions in An Online Course

日本の獨協大学で使われている「Manaba」という学習管理システムのログを解析し、学生のオンライン学習の行動パターンを分析したという発表です。ログ解析により、自主的に学習できる学生は授業内容のページなどに多くアクセスしていたのに対し、苦戦している学生や中退の可能性が高い学生は課題提出ページにばかりアクセスしていることが分かったそうです。自分はそうならないように頑張ろうと思いました。

Decoding Memos:The Role of Learning Concept Explanation System in a Technology-Enhanced Learning Environment

耿先生の発表です! 九大生ではお馴染みの「e-bookシステム」のログを解析し、学生の学習活動と成績の関係を明らかにしたという発表です。ログ解析により、メモやマーカーを頻繁に使っている学生の方が高い成績を収めていることが分かったそうです。自分はそこまで積極的に使っていなかったので、これからよく使うようにしようと思いました。

Introduction to SEN with VR Serious Game

「SEN Game」という、自閉症スペクトラム障がい(ASD)の方の感じる困難や不安を体験するための教育VRゲームを体験しました。AIが支配する2901年という未来の世界を再現し、少数派である人間(自分)に対して不安感や敵意を感じさせるような環境を作ることで、自閉症スペクトラム障がいの方の感じる感覚や状況を体験できます。自分も実際に体験しました。自分よりも大きなロボットが出てきて、少し怖かったです。

この日は山田先生と耿先生とスーパーに行って珍しいフルーツを買いました。シンガポールを代表するフルーツ、ドリアンを買ってその場で食べました。匂いはきついですが、食べてみるとクリーミーで甘くて美味しかったです。その後またホーカーに行きました。この日の夜ご飯はアヒルのライス(Braised Duck Rice)でした。とても美味しかったです!
 
その後にスーパーで買ったフルーツを食べました。ジャックフルーツ、スターフルーツ、グアバ、リエンウーを食べました。ジャックフルーツが1番美味しかったです。

 

4日目

この日は山田先生が発表する日でした。そして、他の方の発表も聞きました。

Gamification and motivation in education: A systematic literature review

「ゲーミフィケーション」と「モチベーション」に関する研究を対象とした系統的文献レビューの発表です。「ゲーミフィケーション」とは、ゲームのデザインや機能などの要素を学習や仕事に導入することです。レビューによって、ゲーミフィケーションは学生の教育においてモチベーションに良い影響を与えることが分かったそうです。ゲーミフィケーションの具体例として、経験値やバッジ、ランキング、ミッション、協力要素など様々なものがあったので、自分の絵本の読み聞かせトレーニングにも導入しようと思いました。

FazBoard: an AI-Educational Hybrid Teaching & Learning System

FazBoardという、デジタルキャンバスとAIアシスタントを導入したオンライン学習プラットフォームについての発表です。発表では、フランケンシュタインのアバターに勉強の質問する様子がありましたが、そのような感じで自分の好きなキャラクターに授業を教えてもらえたら楽しいだろうなと思いました。個人的にはピカチュウに数学を教わってみたいです(笑)。

Exploring the Role of Metacognition in Enhancing Learning Outcomes through Learning Analytics Dashboard

山田先生の発表です! 九大生108名がB-QUBEとMetaboardを使って学習を行った際に、メタ認知意識とLAD (学習分析の結果を視覚的に表示するツール)の評価について質問し、ログの収集もしたという発表です。結果として、学習パフォーマンスとLADの評価には直接的な関連性は見られなかったそうですが、メタ認知が高い学習者ほどLADの有用性を高く評価していることが分かったそうです。山田先生の発表を通してメタ認知という言葉について深く知ることができたので、自分の学習に対してもメタ認知をより意識して学習の計画や方法を考えようと思いました。

From Snackable to Powerful: The Essentials of Microlearning Design

過去10年間の文献をレビューすることにより、学習におけるマイクロラーニングの効果的な設計方法についてのガイドラインを定めたという発表です。マイクロラーニングとは、複雑な内容を小さな断片に分解し、短時間で学ぶことができるようにした学習形式のことです。エビングハウスの忘却曲線に対して、短時間の反復学習で効果的に記憶できるということで、自分も英単語学習などに適用してみようと思いました!

最後に会場でご飯を食べました。学会を通して知り合った方々と話したりしました。みなさんとても優しい方々で、とても楽しい時間を過ごすことができました。耿先生と学会を通して知り合ったNashさんと最後に写真を撮りました!

初めての学会参加で最初は不安でしたが、みなさんのおかげでとても有意義な時間を過ごすことができました。そして、英語も発表も研究もまだまだ足りないことだらけということを実感しましたが、「これから頑張ろう!」と強く思いました。

この日も山田先生と耿先生と夕ご飯を食べました。チャンギ空港のソンファというお店に行きました。バクテーという、骨のついた豚肉をスパイスやニンニクと一緒に煮込んだ料理を食べました。胡椒が効いていて、シンガポールで食べた料理の中で1番美味しかったです!(バクテーは写真下の左右にある料理です)

その後飛行機に乗り、香港を経由して無事福岡に帰ってきました。✈️

今回初めて国際学会に参加して、今の自分の状況やこれから自分が取り組んでいくべきことをより深く実感することができました。今回の経験を活かして、これから英語の勉強、研究を頑張っていきたいと思います! 発表するにあたって発表資料や発表練習に対するアドバイスをくださった福嶋先生、研究や進路について様々な話をしてくださったり、質疑応答でサポートしてくださった山田先生、他の発表者の方と話すときにサポートしてくださった耿先生、本当にありがとうございました!