ADMA 2025・参加報告(Wang Juntao)

学会情報
- 参加した学会名
- 開催場所
- 京都
- 日程
- 2025/10/22 - 2025/10/24
- 報告者
- Wang Juntao
発表概要
- タイトル
- Mining Temporal Structures for Emotion Recognition in Conversation via a Temporal-Aware Attention Network
- 内容
- 本研究は、会話における感情認識(Emotion Recognition in Conversation) に関するものである。会話感情認識とは、会話中の各発話に含まれる感情を予測する課題であり、通常の感情分類と異なり、文脈(コンテキスト) が予測に大きな影響を与える点に特徴がある。下図に示すように、会話の流れや前後関係が感情理解の鍵となる。
- これまでの研究では、主に会話履歴(文脈情報) に焦点を当てて、現在の発話に対する影響をモデル化し、精度を向上させる試みがなされてきた。しかし、会話という構造には時間的要素(時系列構造) も極めて重要である。本研究では、この時系列構造に着目し、多層的な時序情報をモデル化 することで、感情分類の精度向上を目指した。
- 具体的には、以下の2つの観点から、会話感情分類における時序要素の影響を定式化し、Self-Attention 構造の改良 によってその考えを実装した。
- 相対位置エンコーディング(Relative Position Encoding)相対的な発話間距離を時系列的に符号化し、注意機構(Attention)のクエリとして用いることで、発話間の相対位置に基づく重みづけが可能となるよう設計した。
- 時系列減衰関数(Temporal Decay Function)会話において、人間は一般的に「近い時間の発話」ほど影響を受けやすいという傾向を持つ。しかし従来の注意機構では、この性質を十分に反映できていなかった。そこで、本研究では注意重みの計算時に時系列減衰関数を導入し、時間的に近い発話がより大きな注意を受けるよう制御した。
- 実験結果から、時系列モデリングの有効性が確認され、既存の文脈モデリング手法と同等の性能を達成した。今後は、内容的モデリングと時系列モデリングを統合することで、さらなる精度向上を目指す予定である。
質疑内容
Q: 時系列減衰関数はご自身で定義されたものですか?もしそうでなければ、新規性はどの点にありますか。
A: 時系列減衰関数自体は逆数関数(reciprocal function) に基づいていますが、本研究における新規性は以下の2点にあります。
- 従来の時系列減衰関数は指数関数的減衰(exponential decay) が一般的に用いられています。しかし、指数関数では距離の離れた文脈情報が急激に減衰してしまうという問題があります。そこで本研究では、逆数関数を用いることでより滑らかな減衰 を実現し、近距離の発話に重点を置きつつも、有用な長距離依存関係を保持できるようにしました。
- 多くの既存研究では、時系列減衰関数を入力系列に直接埋め込む 方法を採用していますが、本研究ではその影響をAttentionスコアの計算過程に組み込む ことで、入力段階でのノイズを低減するとともに、モデルが発話間の遠近関係により敏感になるように設計しました。
体験記
今回初めて京都を訪れたが、京都の街並みが非常に気に入った。 建築様式が統一されており、街全体が落ち着いて静かな雰囲気に包まれている。また、学会で提供された食事もとても美味しかった。
学会は3日間にわたって開催され、口頭発表とポスター発表が並行して行われた。



本学会のテーマは「データマイニング」であり、参加者の研究分野は多岐にわたっていた。いずれも機械学習技術を応用して効率的なデータマイニングを実現する研究が多く見られた。
3日間を通して感じたこととして、データマイニング分野におけるLLM(大規模言語モデル) は、他の研究領域ほどの注目をまだ集めてはいないものの、徐々に以下のような形で支援・拡張の方向性 として取り入れられつつあることが分かった。
- テキストデータマイニングおよび知識抽出
- データマイニングプロセスの自動化
- 可視化・可解釈性およびインタラクティブ分析
以上の傾向から、今後もデータマイニング領域においては、LLMは主要な研究対象というよりも、研究を支援するツールとしての位置付けで発展していくのではないかと感じた。

